『ラブライブ!』第2話の花田十輝さんの脚本に注目してみる

ラブライブ!』面白いですね。テンションの高さが飛び抜けてるなあと思わされます。
花田十輝さんの、情報を短時間で見せ時間を圧縮してスピーディに見せる脚本が、その一因として上手く機能しているな、と思わせるものだったので、ちょっと注目して見ていこうと思います*1


・一つの話の中で見せる人物の量
ラブライブ!』第2話は、μ'sとして活動していこうとする穂乃果、海未、ことりの三人がメインではありますが、対立する生徒会はもとより、アイドルに興味を持っている花陽、曲作りを頼まれる真姫と、OPEDを見る感じこの後メンバーに加わりそうな面子の多くが出て、それぞれ立場を明確に描かれています。
生徒会の中でも反対派の絵里と応援派の希を分けて描いたり、没個性にならないよう明確に立ち位置を組まれている印象です。
恐らくμ'sの名づけ親っぽい花陽*2や、曲を作って送った真姫も、作中で「出すだけ」ではない見せ方になっていますね。
まあ、にこや花陽の友達の凛はまだちょい見せな感じですが、9人中7人をがっつり話に組み込んでるのは凄いな、と。


同じアイドルを扱ったアニメである『アイカツ!』では、初めは主役のいちごと友人のあおいを見せ、第3話でプロとして活動する美月を見せ、第5話で経験豊富な蘭が登場、といった具合に、話数毎にキャラを出してじっくり見せる構成になっています。これは視聴者の子どもにキャラを確実に覚えてもらうためであり、1年の長丁場シリーズであるから出来る構成でもあります。
一方『ラブライブ!』は、1クールという限られた話数の中で、9人のヒロインをそれぞれしっかり見せていかねばならないシビアさがあります。既にCDやライブを展開している企画なので、各ヒロインにファンがついているはずで、早い段階から各キャラが出てこないと視聴者の心を掴めない。そのため、活動を始める三人以外のキャラにもそれぞれの立ち位置で出番を与えて存在感を見せるわけですね。
穂乃果に直接声をかける花陽に対する、ネットで票を入れる真姫を見せるための段取りは、絵里がネットに登録された穂乃果達のグループを見ているカットを数カット入れるだけという、説明を省く時間の圧縮ぶりも、最大限キャラの動きを見せることに貢献していますね。


・本番に向けた練習回でありつつ、周りに認められるところまでやる
これもなかなか凄いと思ったところです。まだアイドルとして練習を始めたばかりでありつつ、クラスメイトや花陽や真姫の応援を得るところまで描いてしまうという。去年の部活アニメ『TARI TARI』なんかは校内では結構ずっと周囲の反対があって、抜け道的に町内会周りで活動していた印象なので、こちらは飛ばしてるなーと思わされます。ここはスクールアイドルという設定ゆえに描けるものかな、とも思えますね。
生徒会長の絵里は相変わらず反対寄りですが、後輩の真姫にアイドルの大変さを分かってもらうという話を先に入れることで練習メインの回でもカタルシスを作るのが上手いと思わされました。一方アイドルに興味があるキャラとして、声援を送る花陽と、まだ関わってこないにこという二者をそれぞれ対比して見せるのも上手いですね。


演出の領分にも入るところでいうと、最初の階段走りの表情と、最後の表情の対比も決まっていました。A冒頭の中庭を伏線に、Bの中庭のシーンの次にクラスメイトが声をかけるのを持ってくる構成も、場面の対比によって見せるもので、キャラや場面の対比がしっかり組まれています。
演奏の終わった真姫に拍手する穂乃果のカットは1話の反復で、このカット一つで場面の状況を説明する余分な部分の排除も、演出を信じた大胆な手法ですね。
場面のつなげ方の構成としては、書かれた紙を見せていくことで話を作るのも良かったです。許可書を提出するアバンから、掲示板に張られたポスター、悩む穂乃果の真っ白なノート、μ'sの名前の書かれた紙、真姫に渡される海未の歌詞、μ'sに宛てた手紙*3……と、キャラの意志を代弁するようにそれぞれが書いたものや空白のノートが要所に用いられる構成も、演出を信じ、台詞等だけに頼らない脚本の妙だと感じるところです。

こうした、描写を重ねることで最大限にストーリーを語る脚本構成とそれに応える演出によって、時間を圧縮し真姫から曲が届くまでを描いてみせるということが出来るわけですね。


こうして見ていくと、1クールで9人のヒロインを見せる内容であるため、とにかく余分なパートは作れない、あるいは退屈をさせないといった意識が強いと思わされます。その分各ヒロインを話に絡めるためそれぞれのパートの結びつきも強く、観ていて楽しめるのだと思いますね。


ラブライブ!関連エントリ

*1:もちろん、京極尚彦さんがその脚本を更に演出でブーストさせているのもあると思いますが。

*2:元は読者公募で決まった名前らしいので、それを尊重してか誰が入れた票か厳密には分からない作りになっていますが……。

*3:ことりが描いた衣装イメージもそうですね