話数単位で選ぶ、2023年TVアニメ10選

かなり久しぶりの投稿になりますね。皆様お元気でしたでしょうか。

 

最近はTwitter(X)の方でもTVアニメの各話に感想をつけることが多く、

今年は記事を書けるだけの話数がぱっと浮かんだので書いてみることにしました。

 

今は本企画の集計は「aninado」様が行っているそうです。

企画趣旨も「aninado」様から引用させていただきます。

■「話数単位で選ぶ、2023年TVアニメ10選」ルール
・2023年1月1日~12月31日までに放送されたTVアニメ(再放送を除く)から選定。
・1作品につき上限1話。
・順位は付けない。
・集計対象は2023年中に公開されたものと致しますので、集計を希望される方は年内での公開をお願いします。

 

■『山田くんとLv999の恋をする』Lv.08「もしそうならそれはすごく」

 

脚本/中西やすひろ 絵コンテ/澤井幸次 演出/熊野千尋 作画監督/竹内杏子、唐澤雄一、宮前真一 総作画監督濱田邦彦

カードキャプターさくら』『ちはやふる』といった少女漫画作品の監督を多数手がけている浅香守生監督だけあり、第1話のアバンからして引き込まれる演出をしていたが、今年で68歳の澤井幸次の絵コンテは特に切れ味が鋭かった。

台詞と台詞の間を切り詰めたハイテンポなコメディで進行したと思えば、茜の心が動く場面は間と静寂(あるいは残響)を使って決定的なものとして描き出す。山田が茜を名前で呼んだ瞬間の白んだ背景と消えるモブは白眉だった。

30分に満たないTVアニメ尺の時間のコントロールが頭一つ抜けていた。

 

■『転生貴族の異世界冒険録』第9話「修行」

脚本/藤本冴香 絵コンテ・演出/中村憲由 作画監督/桝井一平、鈴木伸一、野上慎也、HANIL ANIMATION 総作画監督/徳川恵梨、永井泰平、那須野文

転生した主人公を幼少期から追う転生モノのフォーマットをキッズアニメのテイストに落とし込み、中村憲由監督らしいハイテンションコメディに昇華した技ありの一作。

しかしこの回は主人公のカインがユウヤに呼ばれ、自分が転生した理由を知る作中でもシリアスなエピソード。

Aパートでカインがハクを介錯しようとする時にインサートされる前世の回想と「いつも誰かを守りたいと思っていたのに」という台詞を、Bパートでのドランとの修行中にカットバックされる両親の死因となったアーロンとの戦いの回想と「大切な人を守りたい」という台詞に繋げて、1話数ながらカインの根っこと成長を見せ切る編集が見事だった。

天丼コメディを続けることでカインと彼を取り巻く人々の絆にも説得力がある。アニメという抽象度の高い表現が持ちうる伝達力を改めて教えてくれた。

 

■『ツンデレ悪役令嬢リーゼロッテと実況の遠藤くんと解説の小林さん』chapter 6「悪夢とヘタレと姫抱っこ」

脚本/福田裕子 絵コンテ/吉村文宏 演出/上間由梨 作画監督/諸葛子敬、齊藤格、清水勝祐、遠藤省二 総作画監督/片山みゆき

手塚プロダクション制作、『おにいさまへ…』で出崎統監督の下で演出をしていた吉村文宏監督による近年流行の悪役令嬢モノという絶妙な組み合わせが楽しい一作。

実況と解説でも踏み込めない、王子の婚約者という役割によって本心を抑圧されたリーゼロッテの内面に迫るこのエピソードに確かな切迫感があったのが良かった。感情が乗った映像を一気呵成に見せるために切り詰めた編集が良い。

最後に無垢だった頃の少女のリーゼロッテで締めるのも泣ける。

嫉妬の炎を冷たく燃やす楠木ともりの演技と、フィルムスコアリングかのように場面毎の心情を描写する劇伴も良い仕事をしていた。

 

■『彼女が公爵邸に行った理由』第6話「彼女がコスプレした理由」

脚本/広田光毅 絵コンテ/ロマのフ比嘉 演出/上薗隆浩、山元隼一 作画監督/丹澤学、錦戸未奈、橋本真希、林田多希、Haavard Skjeggestad Dale、陳潔琼 総作画監督橋本治

この回は絵コンテが鮮烈だった。

ノアの書斎の場面から真俯瞰が印象的に使われる。こうも上から撮られると、上に何があるのか気になってしまう。そして真俯瞰の構図で場面が寝室から小舟の上へ飛ぶ。夜の水面には花火が照り返している。ノアがレリアナに言う。「私のそばにいてくれ」ああ花火が上がり切る。爆ぜる瞬間、画面に映るのは……。

ノアがレリアナに惹かれているのを決定的なものとして見せるドラマチックな絵コンテと演出にとても興奮したエピソードだった。

『夫婦以上、恋人未満。』#07も良かったし、山元隼一監督の花火回はスペシャルだ。

 

■『トモちゃんは女の子!』#08「夏祭りの夜/二人の距離感」

脚本/清水恵 絵コンテ/小林一三、駒宮僅 演出/塚田拓郎、駒宮僅 作画監督/駒宮僅、谷口元浩、高星佑平、中和田優斗、二宮奈那子、赤尾良太郎 総作画監督谷口元浩

第1話は智と淳一郎の肉体接触がヒヤヒヤする割にオチをつける前のタメや後の余韻みたいなものがなく平坦で大丈夫かと思っていたが、狂言回しのキャロルの登場以降は右肩上がりに面白くなっていった、ある種TVアニメらしい作品。

特にこの第8話はBパートの絵コンテ・演出・作画監督を務める駒宮僅が衝撃だった。冒頭から水たまりの映り込みまで使ったレイアウトや凝ったライティングで見せつつ、デフォルメも勢いがあって楽しい。

情感や緊張感はあるけど枠に収まらない破天荒さもある演出がそのまま群堂みすずのパーソナリティに直結している感じも良かった。みすずはお気に入りのキャラクターだから、Aパートの独白からBパートの淳一郎との帰り道に繋げて彼女の心情を拾ってくれたのも嬉しかった。

 

■『スキップとローファー』Scene.08「ムワムワ いろいろ」

脚本/米内山陽子 絵コンテ・演出/山城智恵 作画監督/柳瀬譲二、Lee san jin、中山みゆき、佐藤好、田中未来、花輪美幸 総作画監督/梅下麻奈未

P.A.WORKSらしいカッチリした画面や所作の作画は活かしつつ、出合小都美監督の劇伴を含めた演出のコントロールで軽やかに仕上がった一作。

傍観者的な立ち位置をとるミカが、美津未と志摩のデートを尾行する中でより外側に立つナオちゃんと出会って当事者側へと背中を押されるドラマが心地よい。

一方で梨々華に過去を責められた志摩の孤独な夜と、かしましい女子会の夜が同時にあることを示すクロスカッティングの切れ味が鋭く決まっているのが印象的。デフォルメ女子会にこの劇伴を重ねるのが凄い。

 

■『君は放課後インソムニア』第10話「姉はん星」

脚本/池田臨太郎 絵コンテ・演出/横手颯太 作画監督/三橋妙子、冨永拓生、井元一彰 総作画監督/熊田明子

本作の舞台・金沢出身の池田ユウキ監督を始めとした若手の演出家陣の仕事と、各地方スタジオ含めたライデンフィルムの内製率の高さが充実に繋がった一作。

妹の伊咲を昔から知っているのは姉の早矢だけど、伊咲から伝わってくるイメージをフィルター越しに目撃するのは丸太だ。心臓の病気を丸太が知っていることに驚く早矢の表情と間と、足を組み直す描写が良い。

そうして早矢の心情を紐解いていった先にあるバトンタッチが切ない。

大人である早矢の象徴としての車をAパート冒頭から横切らせたり、回想で後部座席に乗る早矢を見せたりすることで印象付けているのも良かった。

 

■『アイドルマスター シンデレラガールズ U149』第4話「羽が折れているのに飛んでいくもの、なに?」

脚本/村山沖 絵コンテ・演出/河原龍太 作画監督/野田猛 総作画監督/井川典恵

アイドルアニメながら児童労働の設定へのシビアな視点が見える奇妙な一作だったが、それゆえこの回も印象に残った。

決め込まれたレイアウトによって、プロフェッショナルたろうと振る舞う桃華を追い詰めるカメラが強調される。プロデューサーの言葉を受けて桃華が見たのはカメラではなく柵の向こうにいるファンの少女だ。子供の高さの目線によってこそ桃華は飛ぶ。

シビアな大人の世界の中で少女がノブレス・オブリージュを一本の命綱に擬似的な死を超えるイニシエーションに臨む、試み自体がバンジージャンプのようなエピソードだった。

 

■『江戸前エルフ』第9話「Time After Time」

脚本/ヤスカワショウゴ 絵コンテ/齋藤徳明 演出/岩田義彦 作画監督/小川莉奈、森田裕之 総作画監督/中尾隆文、齋藤温子、小笠原憂、細川修平、牙威格斗

原作絵のテイストをかなり踏襲しつつもルック作りだけに堕せず情感を描くことにも余念のない良い作品だった。

大掃除で出てきたベータの録画に残っていた小糸の母の姿を直接映さずに、小糸の背中を長い間をとって見せるこの場面にはひとつの達成を感じた。今は失われてしまったものへの想いを寄せる目線が温かくも切ない。

Aパートで雨上がりに駆け出す小糸と小柚子、それを見つめるエルダを先に見せておくことで人の歴史の連なりとエルダの永遠性を実感させる構成になっているのも良かった。

 

■『私の百合はお仕事です!』シフト.03「何を信じたらいいんですの?」

脚本/ハヤシナオキ 絵コンテ/高橋成世 演出/深瀬重 作画監督/郁山想、柿畑文乃、酒井KEI、清水拓磨、Zearth Sato 総作画監督/岩崎たいすけ、徳田拓也、原田峰文、冨岡寛

citrus』を含め高橋丈夫監督作品に多く参加するさんぺい聖監督が遺憾なく腕をふるい、百合コンカフェに集まった変わり者たちをサスペンスフルに描く楽しい一作。

本作での高橋成世の絵コンテは毎回どこかしらにキレがあって面白かった。

この第3話では主人公の陽芽が自分に強く当たる美月を懐柔しようと手を重ねるが、見事に地雷を踏んでしまった場面。初めは美月も画面に映っていたが、長いPANによってどんどん画面から消えていく……というホラーな撮り方に戦慄した。

サスペンスに彩られた少女達が互いの壁を乗り越えた最終回の多幸感も良かった。

 

10選は以上です。

が、以下に選外にはなったものの言及しておきたいエピソードも書いておきます。

 

■『川越ボーイズ・シング』menu6「Summer Blessing」

第9話の絵コンテ・演出・作画監督/武内宣之回も素晴らしかったけど、この時点で本作はかなり面白かったのでこのエピソードを。

静男と父の揉め事を見た天使が自分の過去の過ちに気づき、それを聞いた静男が自分の歌のルーツを思い出すドラマの連ね方、それを喜劇でやってしまうところ、静男の姉のギャルからもたらされる台湾かき氷までシナリオが決まっていた。

 

■『16bitセンセーション ANOTHER LAYER』Layer 07「雨降って地固まる」

アルコールソフトの社長がコンプレックスから詐欺に引っかかったことが明かされ、息子の守が気づけなかったことを悔いる急転直下のドラマを、大槻敦史の絵コンテによるレイアウトの決まった演出で切迫感をもって描けていた。

作中何度も出てくるアルコールソフトの社屋がライティングや時間経過で様々な表情を見せるのも良かった。

 

選出した作品で察される方もいるかと思いますが、今年は特に4月始まりの作品に刺さるものが多くて充実感がありました。来年も楽しい作品との出会いに期待しています。

 

そして『川越ボーイズ・シング』第12話、お待ちしております……!

AqoursのLoveLiveにある、現実とアニメの連動を振り返る

2016年にアニラジの話をして以来、はてなダイアリーはてなブログに移行してなお

放置しきっていた当ブログですが、ラブライブ!フェスを前にひとつ書きたいことを

記事にしておこうと思いたち、筆を執りました。

 

というのも、AqoursもTV出演や取り上げられる機会が多いのですが、紹介の際は

まだ「アニメとのシンクロダンス」という点に終始することが多いなと思っていて。

 

もちろんそれもμ'sから引き継いだ核の一つではありますが、Aqoursのパフォーマンスは

アニメからのフィードバックだけでなく、アニメとダンスが相互に連動した構成に

独自の魅力があると私は感じています。

 

あまり他の方がそこに触れているのも見ないので、今回書いていこうかなと。

 

アニメと完全に重なり合う構図

Aqoursの1st LoveLiveは「青空Jumping Heart」で始まります。

動画のサムネイルでも分かりますが、この曲では冒頭、アニメのキャラクターと

ステージに立つキャストのシルエットが完全に重なり合います。

アニメとステージのリンクまで計算して、アニメの構図や振り付けを作り込んでいる

ことに当時衝撃を受けました。

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放送回単位で選ぶ、2015年アニラジ5選

昨日の記事で書いたとおり、本日はアニラジ5選をやります。


他にやってる人もいないし、ルールもないようなものですが、一応……。

<ルール>
・2015年1月1日〜12月31日までに放送・配信されたアニメ・声優関連ラジオ番組から選定。
・1番組につき上限1回。
・思いついた順に掲載。順位は付けない。


といった形で、早速参りましょう。


■A&G NEXT GENERATION 三上枝織のLady Go!! 第250回
2015年で5年間の幕を閉じたLady Go!!から代表してこの回を。
今回選んだのは最終回のひとつ前の回。
この回で、三上さんがハガキ職人「とある現役のガチ兄さん」のことを「現役(げんやく)」と読み続ける理由が語られました。
もともと「現役(げんやく)」と読んでいたのは、1年目でLady Go!!を降板した寺本來可さんでした。
三上さんは、寺本さんの痕跡がずっと残り続けるようにそれを引き継いでいたと。
そして、三上さんは「私がげんやくと読み続ける限りLady Go!!も残り続ける」とまで言いました。
天然でどこか抜けているような三上さんの芯の強さを感じ、はっとさせられた回でした。


RADIOアニメロミックス ラブライブ!〜のぞえりRadio Garden〜 第68回
こちらも2015年に終了した番組。
この時期すでにマンネリ気味になりつつあったところで、突然の全編通してのすごろく回。
はじめ出目が悪かった南條愛乃さんが、楠田亜衣奈さんがジュースを買っている間にゴールしてしまう畜生展開はまさに奇跡。
それが僕たちの奇跡でした。


村川梨衣の a りえしょんぷり〜ず♡ 第2回
すでに様々な番組で強烈なキャラが周知されている村川さんですが、この番組の一人コールアンドレスポンスは衝撃的でした。
構成作家ちゃんこさんに「どうしたの」と言われた時や、サンバを踊り出すディレクターへの突っ込みも新鮮。
作家やディレクターもキャラ濃い目で、独自のパワーバランスとなってるのがこの番組の特色かなと思います。
まさに三頭政治、声優ラジオ界の第一期Ritchie Blackmore's Raibowと言えるでしょう(言えない)。


文化放送ホームランラジオ!パっとUP 第10回
2015年最も勢いに乗っていた番組……の中の箱番組
最近露出が増えている優木かなさんと、WUGの一員である永野愛理さんがパーソナリティ。
優木さんはラジオ番組やニコニコ生放送番組の経験があり、すでに立ち振舞が器用な印象ですが
おっとりしたようで意外とぶっ込んでくる永野さんにイニシアチブを取られてしまう感じが良いです。
この回は、最後の永野さんの「私ともラブラブで」に優木さんがブッと吹き出して「動揺が隠し切れない」という下りが良かった。
2015年の百合大賞です。


■内田さんと浅倉さん 第69回
内田彩さんのお誕生日回で、浅倉杏美さんがお祝いの手紙を読むというサプライズがある回。
それだけでもスペシャルな回ですが、リスナーの「女性下着は上下で消耗に差があるから上下一致しないものを着ている」という
ネタへの女子力の高い反論あり、一方で内田さんの自宅にアリの行列ができていた話もありで、情報量の多い回でした。
この下着の話で「上下一致しないものを着ている」と言った他番組は、確か「小松未可子のLady Go!!」だったはず。


以上です。


2015年はLady Go!!やのぞえりなど良く聴いていた番組の終了が多かったので、それもあってのアニラジ選でした。
こちらも2016年は10選まで出来るようにレベルアップしていきたいですね。
音泉方面とか手薄ですし。


それでは、2月20日の「楠田亜衣奈渡部優衣の気分上等↑↑」イベントでお会いしましょう。

話数単位で選ぶ、2015年TVアニメ5選

なんと1年ぶりの更新です! こわい!


相変わらずアニメ・マンガ評論刊行会さんのところで編集としてアニメ評論集同人誌「アニバタ」に携わっています。
書店委託通販もありますので、ご興味ありましたらよろしくお願いします。


では、2015年のTVアニメから個人的ベストを選んでいこうと思いますが、今回は10選ではなく5選とします。
自分の視聴数が例年より落ちているのもありますが、厳選したいなと思いまして。

<ルール>
・2015年1月1日〜12月31日までに放送されたTVアニメ(再放送を除く)から選定。
・1作品につき上限1話。
・思いついた順に掲載。順位は付けない。


■『アイドルマスター シンデレラガールズ』 第17話「Where does this road lead to?」

脚本/雑破業 絵コンテ/鈴木健太郎 演出/矢嶋武 作画監督/田村里美、古橋聡

城ヶ崎美嘉の葛藤を軸に、城ヶ崎莉嘉の自己表現の苦しみ、赤城みりあの家庭の悩みを一つのドラマにまとめ上げた傑作エピソード。
美嘉の広告のショットが決まるラストまで神経の行き届いた雑破業さんの構成の妙が光っていました。
C89にて頒布した「アニバタ vol.14 特集 アイドルマスター シンデレラガールズ」では本エピソードを中心に雑破業さん脚本について書いています。
今回のアニバタも書店委託通販をしていますので、見かけた際はよろしくお願いします!(熱い宣伝)
あと、このエピソードが好きな方におすすめしたいのが、雑破業さんが実質のメインライターを務めた『戦国コレクション』です。アイドル回もあるよ!


■『Go!プリンセスプリキュア』第22話「希望の炎! その名はキュアスカーレット!」

脚本/田中仁 絵コンテ・演出/田中裕太 作画監督/中谷友紀子

プリキュアシリーズで経験を積んできた田中裕太さんの初シリーズディレクター作品らしく、プリキュアのドラマの肝要を押さえたエピソード。
短調のメロディが長調のメロディと重なり完成した曲と、過ちも含めた自己を肯定するトワのドラマをリンクさせるギミックが見事でした。
作画面も板岡錦さんの炎エフェクト、藤井慎吾さんの抜群の空間表現によるアクション、志田直俊さんの火の粉を活かした変身バンクなど見所多数。


■『えとたま』第拾弐話「干支繚乱」

脚本/赤尾でこ 絵コンテ・演出/追崎史敏 CGコンテ/新井陽平 CG構成/和岡つかさ 作画監督小池智史秋山由樹子、白井順、追崎史敏

白組の抜群のCGアクションを堪能しつつ、佐藤順一門下ともいえるエンカレッジらしいハートウォーミングなドラマを楽しめた一作。
チュウたんの「嫌いだ」からの感情が爆発する一連の場面に、このシリーズを観てきた甲斐を感じました。


■『ご注文はうさぎですか??』第8羽「スニーキングストーキングストーカーストーリー」

脚本/ふでやすかずゆき 絵コンテ/山崎みつえ 演出/荒井省吾 作画監督/Lee Duk Ho、Kim Jeong Eun、Cha Sang Hoon、油谷陽介、りお

キッズアニメライクなコメディ感覚とハートウォーミングなドラマ作りが日常ものの中でも好みの本作。
このエピソードは、ふでやすさんの脚本をさらにドライブさせる山崎みつえさんの絵コンテが良かった。
三つ巴になり硬直する場面は、個人的な本作の瞬間最大風速でした。


■『少年ハリウッド -HOLLY STAGE FOR 50-』第22話「ファンシーメルシーブラックコーヒー」

脚本/橋口いくよ 絵コンテ/井出安軌 演出/森義博 作画監督/謝苑倩、鎌田均、中山初絵、糸島雅彦、北川大輔

劇場内や作品内番組など、箱庭的な世界での舞台劇的な作風の多い本作の中では珍しい、外でのゲストキャラとのドラマ。
絵コンテは『おねがい』シリーズを手がけた井出さん。佐伯キラの失恋と成長のドラマは、変化球の多い本作の中では特にストレートに響きます。
アイドルアニメの中でも、失恋エピソードをここまで爽やかに描けるのは男子の特権だなとも思わされました。


以上です。


番外編として、日本アニメ(ーター)見本市の『ザ・ウルトラマン ウルトラマン対ジャッカル』を。
巧みな空間表現で説得力を持たせつつ特撮本編の感触も残したウルトラマンの宇宙での戦闘には、特撮好きとして目頭が熱くなりました。


2016年はまた10作選出できるようになれば良いなと思います。
また明日は、何もなければ「放送回単位で選ぶ、アニラジ5選」をやりたいなと考えています。


2016年1月11日に新宿ネイキッドロフトにて、このTVアニメ10選企画を語るイベントがあるそうですね。

各々様々な視点を持つアニメブロガーの皆さんが登壇されるようで、気になるイベントです。


・今までの10選

話数単位で選ぶ、2014年TVアニメ10選

2つ前の記事が去年の話数単位10選記事! こわい!


ブログに宣伝記事を書く間もなかったのですが、今年はアニメ・マンガ評論刊行会さんのお誘いで
初めて編集として同人誌制作に携わったりと、色々と新しいことができました。
以下、私が企画・編集で携わったC87刊行の同人誌です。書店委託・通販もありますので、何卒よろしくお願いします。

アニバタ Vol.11 [特集]2010年代のアイドルアニメ
http://www.hyoron.org/anibata11


では、本題の2014年TVアニメ10選に移ります。

<ルール>
・2014年1月1日〜12月31日までに放送されたTVアニメ(再放送を除く)から選定。
・1作品につき上限1話。
・思いついた順に掲載。順位は付けない。


<10選リスト>
・『ハピネスチャージプリキュア!』第44話「新たなる脅威!? 赤いサイアーク!!」
・『プリティーリズム・レインボーライブ』第50話「煌めきはあなたのそばに」
・『ガンダム Gのレコンギスタ』第2話「G-セルフ起動!」
・『悪魔のリドル』第十問『女王はだれ?』
・『ピンポン THE ANIMATION』#5「どこで間違えた?」
・『LOVE STAGE!!』第8話「Φ(ラブ)STAGE 男達の流儀」
・『月刊少女野崎くん』第八号「学園の王子様(女子)の悩み」
・『ガンダムビルドファイターズ』第15話「戦士(ファイター)のかがやき」
・『ディスク・ウォーズ:アベンジャーズ』第27話「禁断のヒーロー登場?」
・『HUNTER×HUNTER』第135話「コノヒ×ト×コノシュンカン」


<各話選評>

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CGエフェクト出身ということに注目して見る、京極尚彦監督の『ラブライブ!』PVや2期OP演出

ラブライブ!』2期のOPアニメは、色々な見どころがあると感じています。
まず、東映アニメーションが担当する3DCGは、セルルックもさることながらアニメ作画的なタイミングの付け方に違和感が全然ない。
それに、多分作画部分とタイミング付けをしっかり合わせているタイムシート使いの徹底も感じます。


そういったコントロールは、京極尚彦監督が3DCGを扱う部署の出身というところが出ているのかなと思います。
もう一つ、この京極監督の出身から見える特色があります。
それは、京極監督がCGエフェクト出身という部分です。
これは、以前書いた京極監督のカメラワークの記事とも関わってくる、監督のフィルムの流れへの意識を感じさせるものでもあります。
では、「それは僕たちの奇跡」までに連なる京極監督のCGエフェクト演出を、「snow halation」、「夏色えがおで1,2,Jump!」といったアニメPVから見て行きましょう。


・「snow halation

このPVは曲の通り雪のCGエフェクトがふんだんに使われています。
そんな中、エフェクトに注目するとまず目を引くのが最初のサビ。
「届けて切なさには」*1の部分で引きの俯瞰からカメラをクレーンのように素早くキャラ正面まで移動させることで、
雪よりもカメラの動きが勝ち、雪が静止したような印象になっています。
その後の「悔しいけど」のカット*2も同様で、雪があることでそれに逆らうカメラの動きが強調されて、
動きにダイナミックさが出るんですね。

*1:画像左

*2:画像右

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ウテナファン的な『キャプテン・アース』先行上映第1・2話感想

一週間経ってしまって、関西ではもう本日放送なのですが、第2話までの上映だったし、
放送前ならいけるだろう……という感じでつらつら書いていこうと思います。


キャプテン・アース』は、榎戸洋司さんが公式ガイドブック*1のインタビューで、
「これまで作ってきた作品の、集大成になっているかなと思いますね。」
と書いているように、これまでの榎戸洋司さんの作品――たとえば『少女革命ウテナ』――の要素を随所に感じられるものになっていました。
なので、今回の感想はそういった部分を中心に拾っていく感じにしていきます。
感想については、ストーリーの進行順に書いてないので、ご了承を。


<第1話「アースエンジン火蓋を切る」>


・ロケットで発射され、宇宙で合体するアースエンジン
ここはもう、「『少女革命ウテナ』の決闘場へ向かうパートのロボットバージョン」といった感じでしたw
アースエンジンが昇っていく過程でどんどん合体して大きくなっていくというのは、ウテナの衣装チェンジに近い意図を感じます。
入野自由さんの発言からすると、いわゆるバンク的な使用がされそうなあたりもまさに、ですね。


・幼年期のダイチとテッペイ
幼年期に少年が人間ではない(?)少年と出会い絆を深める、というのは『劇場版セーラームーンR』っぽいなと感じました。
この映画は榎戸さん脚本ではありませんが、榎戸さんと五十嵐卓哉さんの盟友である幾原邦彦さんが監督で、五十嵐さんも助監督をされています。
この場面での、「互いに驚かせあってペンダントをわかちあう」というのは、いかにも榎戸さんらしい作劇で良かったですね。
ウテナ』の脚本集に書いていた、「対立する以前の人間関係」という榎戸さんの言葉を思い出します。

対立しない人間関係の喪失は、幼い頃、誰もが一度は体験する通過儀礼であるから、幼い幹の病気を、象徴的に“はしか”にしてみました。
「本当に大切なものは自分の手に入れて守らなきゃ」と冬芽は言う。対立なくして“自分”は存在しない。


http://kasira.blog97.fc2.com/blog-entry-34.html


・幼年期のハナとの出会い
大きな水泡に閉じ込められたようなハナとの出会いは、『ウテナ』第34話でのウテナが幼年期に初めてアンシーと出会う場面のようでした。
どちらも囚われの褐色の少女と、主人公の原初体験という点で似ているかなと思います。
今作の場合、少女がその場で開放されて話が動き出すので、また『ウテナ』とは違った展開ですが。


・反射光で目の隠れたメガネ姿のアカリ
これは五十嵐さんが監督を務めていた『おジャ魔女どれみ』シリーズ等にあったような表現だなーと感じました。
反射光が透過光で表されるのではなく、見ている先の画面が反射しているあたりに表現技術の進歩を感じますw
アカリはハッカーとして「魔法少女日高里菜さん曰くウィザードのことを指すそう)」を名乗っており、
パーソナルカラーは黄色、そしてこの反射光メガネというあたり、藤原はづき的なのかも?
セーラームーンでの『亜美ちゃんの初恋』や、はづきちゃん等、メガネっ娘をコミカルにしてしまうあたりは五十嵐さんらしいとも思えます。


・エピソードの所感:通過儀礼的な映像の推移
エピソード単体の感想としては、主人公のダイチに寄り添って、彼が一歩踏み込むまでをまとめたフィルムという印象です。
その過程で、過去彼にとって決定的だった体験がよみがえるというストーリーの部分に、
非日常的な島に赴き、暗い地下に降りていったところで自分を変える何かに出会うという画面上の推移が絡んでいるのが、
フィルムとして通過儀礼(イニシエーション)を思わせ暗示的でもあり、ひとつの流れを感じられるものでもあるのが良かったですね。
そして、そこから一気に宇宙に飛び出すから、とても気持ちのいい視聴体験感がありました。

*1:AnimeJapan2014や先行上映イベント等で配布されていたもの

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