夏コミ寄稿本委託開始の告知と最近観た『ダークナイト ライジング』『アベンジャーズ』のこと

前回同様映画のちょっとした感想です。
ネタバレがあるので、今回また告知の方を先にさせて頂きます。


先の夏コミにて頒布されましたアニプレッションさんの「アニプレッションVol.3」のとらのあなでの委託販売が開始したそうです。
こちらに拙稿「東映アニメファン視点による個人的『プリキュア』シリーズ史観と各作品紹介」を寄稿させて頂きました。
他の記事も巻頭富野由悠季監督特集、『夏色キセキ』全話レビュー等と盛り沢山の内容になっています。


詳しい内容についてはこちらのアニプレッションさんの記事をご参照ください。
http://blog.livedoor.jp/anipression/archives/51355164.html


ご購入はこちらから出来ます。
http://www.toranoana.jp/mailorder/article/04/0030/06/82/040030068202.html


また、クレジットカード決済のみですが、送料を抑えられる店頭受取サービスもあるそうです。
http://www.toranoana.jp/mailorder/guide/guide/guide_044.html#3


そんなわけで、「アニプレッションVol.3」をよろしくお願いします。


そして最近観た映画の感想の方へ。まずは『ダークナイト ライジング』から。
ダークナイト』の続編的なタイトルながら、『バットマン・ビギンズ』の設定を取り上げバットマン自体に軸を持ってきた内容。
その判断自体にとやかく言うことはないですが、前作でやったことを更に進めるというより仕切り直しを頑張っていた印象でした。
「やっぱりゴッサム・シティにはバットマンがいなきゃダメだよ!」という状態にどうにかして戻そうといった感じで……。
残念だったのが、今作のヴィランであるベインの造形がぶれていて存在感が弱かったところ。
ベインは中盤バットマンを圧倒して、地獄の淵を体現する存在感を見せ、敗れたバットマンは彼の出自である監獄で自分もその壁を登って再びベインに挑むんですが、終盤ベインは壁を登っていなかっことが判明し、ベインがバットマンを凌駕している理由や、バットマンがベインを倒すために延々壁を登っていた意味が崩壊してしまうのが致命的でした。
あと、部下達や証券所を襲う際にいた低所得者達が何故ベインについていたのかが明示されなかったのもベインの造形を曖昧にしているのもあり、ヴィランとしてあまり魅力が感じられませんでした。
それとブルース・ウェインが都市の地下に融合炉を置いちゃっていたり、博士が融合炉を中性子爆弾に改造する様が描写なし・時間経過も少ないといった描き方で、ディテールに無頓着過ぎるのも気になったポイント。バットマンめっちゃ被曝してるでしょうに……。
革命の描写も『パト2』が浮かんだりしますが、押井さんならもっとディテール凝るよなーと思ってしまったり。
監獄も他のシーンよりファンタジックな絵面で浮いているし……。
ふてくされた序盤、融合炉の判断、延々壁登ってばっかりなのとキャットウーマンにご執心なところでブルースにもあまり魅力は感じなかったなと。
キャットウーマンはブレが少なくて良かったですね。眼福ですしw
社会派な犯罪劇だとか、(壁登りまわりでやりたかったであろう)映像のマジックとか、インテリジェントなものがやりたいんだろうなとは思いましたが、ちょっと全体としてちぐはぐさをどうしても感じてしまう作品でした。


次に『アベンジャーズ』。こちらは曇りなく楽しめました。
ライジング』と比べると別段挑戦的な要素はないアクションエンターテイメントではありますが、何より優れた実写化でした。
本作の前に用意された各々の単独映画がまずどれもヒーローの造形をしっかり行なっていた分の貯金もありますが、
インクレディブル・ハルク』が比較的公開から間があって役者が変わっている分ハルクを話の縦糸に絡めて改めて造形し直したり、
単独映画がなく『マイティ・ソー』でも『アイアンマン2』のブラック・ウィドウ程の活躍がなかったホークアイも縦糸に絡むようにしたりと
シリーズ全体を見た時のキャラクター毎の存在感に偏りが出来過ぎないよう取られたバランスは上手い。
この辺はプロデュースの妙というか、分業が当たり前のアメコミと産業的なハリウッドそれぞれのらしい面が上手く作用した感じを受けました。
シンプルなストーリーとはいえ7人のヒーローを主体に描くのは難しくもありますが、ジョス・ウェドンのまとめ方は良かったですね。
ロジャースが「私が知っている神は一人だし」とか「その話なら知っている」「英語でおk」とか言ったり、トニーが「話が通じる奴はいないのか」と言ったり、ソーがこちらにはいない生物の話をしたり、話の通じなさが随所に散りばめられ、チームに亀裂が入るシーンが激しい口論、という会話のディスコミュニケーションの用い方が上手いなと。
ロキがブラック・ウィドウを揺さぶる際に用いるのが彼女の過去の"話"であり、ブラック・ウィドウはロキの言葉尻から彼の作戦を見抜き、ニック・フューリーがアベンジャーズを結束させるためにコールソンの犠牲という"物語"を話す。ブルース・バナーは仲間に自分の秘密を打ち明け、キャプテン・アメリカはチーム全員に任務を告げ、最後に人々によって「アベンジャーズ」が語られる。
……といった具合に、「話すこと」が節々で重要なファクターになっているのが本作のまとまりをより強めていると感じるところでした。
キャプテン・アメリカとアイアンマンの関係の描き方も良くて、中盤のヘリキャリア襲撃の際プロペラを回すアイアンマンが←向きに動くアップショット、外に投げ出されまいとしがみつきレバーを目指すキャプテン・アメリカの→向きの動くアップショットで繋ぐカット割りを入れてしっかりこの二人の関係性を見せていたのがまずしびれましたね。
作中で「古風(オールドファッション)」と指されたり自身スーツをそう言ったりするキャプテンに、現在のアメリカにヒーローとして広く周知されるトニーは反発するけれど、結束した後は古い話になぞらえた突撃をし、クライマックスでは『キャプテン・アメリカ/ザ・ファースト・アベンジャー』のキャプテンが行った爆弾を抱えての飛行をなぞる、という関係性の変化の見せ方はやっぱり盛り上がりました。
ガンマ線に詳しいブルースがキューブ探しの中核になったり、ロキ側が装置を完成させるためにイリジウムを盗み完成までの時間稼ぎをしたりと先の『ライジング』よりエネルギーや装置の扱いや見せ方が良かったのも好感が持てるところでした。


といった具合で、実写映画に関してはDCよりMARVEL……な今夏でした。
とはいえ来年はザック・スナイダーが監督を務めるスーパーマンのリブート作品『Man of Steel』があり、これもまた楽しみですが。
何にせよ大規模なヒーローアクション・特撮映画に活気があるのは嬉しいところです。