「スマイルプリキュア!」と街

第8話に出てきた交番が、その回の脚本・演出さんの遊びかと思いきや第11話で再び出てきたところから端を発してちょっと考えたことを。



【そもそもの東映アニメの制作工程】
まず先のように思ったのは東映アニメーションの脚本打ちが他とは違う工程を含んでいることからでした。
東映アニメは映画撮影所が大元となっているスタジオのため各話演出の権限が強く、
脚本の打ち合わせにも各話演出の方が参加したり、音響監督という役職がなく、代わりに各話演出が担当したりということがあります。
WebNewtypeでの松本理恵さんのインタビュー記事で、「別の監督さん」という表現が出てきますが、各話演出も監督という扱いなんですね。

・参考
最初にプロデューサーたちとの打合せがあったんですけど、そのときに別の監督さんが『楽しくやればいいんじゃない』っておっしゃったんですよね(笑)。


WebNewtype-オリジナルアニメーション「京騒戯画」監督松本理恵ロングインタビュー
http://anime.webnt.jp/report/view/2809


そうした東映アニメのシステムと、第8話の演出である田中裕太さんが「スイートプリキュア♪」のコメディ回である第33話を手がけられていたことから、「スマプリ」での交番のおまわりさんは一発ネタ的なアイデアとして出てきたものかと思ったんですね。
しかしながら第11話でマジョリーナの発明ネタをパターン化する中で交番ネタを拾っていたのを見ると、シリーズディレクターやシリーズ構成単位でこうしたネタを作っていると見た方がいいかなと思い直しました。
そうなると思うのは、本作では結構町内コミュニティを描いていこうとしているのかな、というところ。



【スマプリにおける街】
交番を意識して取り入れているのもあるんですが、それ以外にもたびたび出てくるのが「町内会」です。
第4話でなおの両親が町内会に出かけていて忙しいという台詞があり、第10話でその町内会があかねの家に来る(あかねの家も町内会に入っている)展開になる辺り、この「町内会」も意識して取り入れている設定なのだろうと考えられます。
なおの弟があかねを「お好み焼きのお姉ちゃん」と呼んでいた辺りも町ぐるみの付き合いを想像させます。


プリキュアシリーズにおいては、「ふたりはプリキュア」や「ふたりはプリキュア Max Heart」で農作業したり社会科見学したりといった教育的な要素を取り入れた回があったり、その後のシリーズでもそれに近い形で社会との関わりを描いていた感じでしょうか。
プロデューサーが梅澤淳稔さんらになった体制でのプリキュアでいうと、「フレッシュプリキュア!」ではスタイリッシュさを狙った部分が見受けられるクローバータウン、「スイプリ」ではメルヘンな外観の加音町といった、主人公の住んでいる街が独特な世界観を持ったものが印象的です。
「スマプリ」においてはこれらよりも「ハートキャッチプリキュア!」の希望ヶ花市に近い、街自体は現実的で強い個性は持っていないタイプに近いと思いますが、学校と家庭メインの「ハトプリ」に比べると町ぐるみの関わりにウェイトが置かれているように思えます。


また、セミレギュラークラスに町内会や交番といった街の要素を置いている他に、第11話で虫のコミュニティを描いているのもポイント。
れいかが「私は感動しました。ここは、昆虫たちの街なんですね」と、虫たちにも街のようなコミュニティがあることを話しているんですね。
この回で虫たちを守るのは町内のコミュニティを守ることの変奏でもあります。


第9話でやよいの嘘から話が大きくなる過程には、みゆき達4人が結束して、それがクラス全体に広がることが裏目に出たような描写があります。
これを見ると、「スマプリ」はメイン5人のつながりが更に大きなコミュニティに作用するという形(あるいは虫たちのように相対化されたり)を取ったりするのかな、と想像させられます。
そんなコミュニティとして普段の少女たちと近いところにある街をメインに描くのかな、と。
話としては町内会で結果を出すために4人組や家族と一緒にあかねがお好み焼き研究に勤しむ第10話なんかがまさにそうでしょうか。
プリキュアにおいては「日常」が重視されるもので、かつ今回の「スマプリ」は普通の女の子っぽさを意識しているようなので、街も現代的にしつつ、そのコミュニティを形成している人たちの存在を見せていく形なのではないかと捉えました。


・参考
ひこ もうひとつ面白かったのは、救うものがこの世界の外部にある点です。もちろん地球のほうでストーリーを展開しないといけないから、危機が地球に及ぶ設定にしてあるけれど、最終的には別の世界で決着を付けるという形にして、日常の外に置いてある。それまでの男の子ものって、地球が滅ぶか、滅びそうな世界に行ってヒーローになるパターンが多かったのに、「プリキュア」はごく普通の日常のなかに危機が忍び込んできて、彼女たちが日常を取り戻していく。危機は外側からきているものだから、それを追い払えばいいだけというつくり方。


【特別対談・前編】鷲尾天×ひこ・田中、『魔法少女はAコード、「セーラームーン」はBコード、「プリキュア」はCコード。そしてDコードは?』
http://www.nikkeibp.co.jp/article/column/20120322/303102/

【おまけ】
思いの外単発話数というより継続していて驚いたところといえばやよいの活発な面もありますね。
第7話で秘密基地探しにはしゃぐ辺りから、エイプリルフールで嘘を言ってみたり、マジョリーナの道具による作用も楽しんだりと。
引っ込み思案だったけど気のおけない友達ができて活発になるという描き方で、こちらの予想を超えた部分によってキャラに厚みが出てきてるのが面白いです。