少女がプリキュアと並ぶという体験 - プリキュアASNS みらいのともだち雑感

なかなか他の記事が書けてない状態ですが、せっかく観てきてかつ面白かったので雑感を書き連ねていきます。
雑感なので色々ととりとめなくトピックごとに。
当然のごとくネタバレ全開の記事ですのでお気をつけて!


【作画について】
まず目を引いたのが冒頭からの作画の良さですね。
アバンは山下高明さん・西田達三さんラインの東映アニメらしいタイミング付けで、モブを描きまくってるのが凄かった。
林さんよりフォルム寄りで動きも多めにつけている感じなので、ここは大西亮さんでしょうか。
続くOPでは、もう判別する必要のないくらいに志田直俊さんが動かしてらして素晴らしい。
まさしくプリキュア達が「伝説の戦士」として人々の目に映る姿だと思わせ、またこれまでのAS映画の姿を凝縮したようなパートでした。
少し飛んでハッピーとスイート勢が邂逅する戦闘はフォルムの変化を見せる動かし方で、大田和寛さんかな、と。
大田さんはスイート本編で目立った作画を多くされているので、そうだとしたらメタ的にも面白いですね。
スマイル5人とフュージョンの戦闘の後半、黄フュージョン〜青フュージョンの辺りは前述の東映アニメらしいタイミングかつ
ダイナミックな描線やポージングが飛び出したりメタモルフォーゼ的な良さもあり。ここは渡邊巧大さんでしょうか。
渡邊さんの描線に関しては「トリコ」第22話のほか、季刊エスの「京騒戯画」特集に掲載された原画も良い判断材料になりますね。
あゆみがフュージョンに飲み込まれる辺りからキュアエコー変身までは林祐己さんですかね。
飲み込まれたあゆみの瞳、口元、唇の影つけなど「京騒戯画」を感じさせます。
吹き飛ばされる、起き上がるプリキュアのカットのタイミング付けも林さんの気持いいそれのように感じました。
エコー変身はすっきりした線が良かった。
とパート推測を書き連ねましたが、こんな感じで今回は見応えのあるアクションが随所に配置されていてとても楽しかったです。
ぱっとどなたがやったか推測が思い浮かばないんですが、船を止める下りも上手かったですね。


【演出について】
今回観て驚いたのは演出、画面構成でした。
あゆみを軸に的を絞った内容にした英断をしっかりと活かし、画面構成が凝った作りになっており演出・レイアウト的に引き込まれる。
スマイル本編の予告OPにもあったSS二人の活躍カットがシンメトリーな構図・カット割りをしているところなんかはツボでした。
あゆみの母が消えてしまった辺りの不安を煽る斜めの構図なんかも決まってましたね。
明確に絵コンテによってストーリーラインを形作ろうという意識も強く、
あゆみの日常風景では天井に近い高い位置からの構図のカットが多く、これはつまり床や地面が多く映り閉塞感を与えるんですね。
マンションの自動ドアや玄関口といったプリキュアらしからぬ現代的な画もポイントで、これらが閉じる画を何度も入れている。
こうした閉塞感のあるカットを積みつつ、フーちゃんと遊ぶ場面でマリンタワーをアオリで見せる。
マリンタワーは後にフーちゃんのいる目的地となって、エコーがそこにたどり着いた時になって青空が背景に大写しにされる。
そこでこれまでの閉塞感のある画からの開放がされるという構成になっており、意志のある演出にしびれました。


あゆみを主体にしてみなとみらいという舞台をはっきりと作ったことで、普通の少女や普通の街並みと対比されて
プリキュアが「いる感じ」に描かれていたのも面白いところで、「女の子は、誰でもプリキュアになれる」というキャッチコピーの通り
キュアエコーの存在とともに観客の女の子に「プリキュアと一緒の場に立つ」体験を促す作りになっていたのも面白かったです。
僕はそこはメインターゲットではないのでそういう想像を楽しんでいるに過ぎないですが、でもそうだと良いなあと。
今までのアトラクション感とはまた別の体感になっている辺り、しっかりNewStageしていたと思います。


アクションやフュージョンの見せ方もアイデアに溢れていて良かったですね。
増幅したフュージョンが合体していって巨大滑車になるとか、最後に流動体としての独特な動きを見せるとか。
志田直俊さんや小川孝治さんが絵コンテにクレジットされていたので、アクションパートはこちらのお二人のアイデアがあるのかも。


志水淳児さんはプリキュアにおいてはフレッシュの立ち上げにSDを務められたものの途中で劇場版のために抜けており、
今回NewStageという新しい企画の立ち上げでの再びの登板はちょっとしたリベンジっぽくて面白いですね。
(それに関してはフレッシュの次のハートキャッチがプリキュアの劇場版を多く手がけられた長峯達也さんなので、あの時は他に劇場版ができる方がいなくて仕方がない状況だったのだろうと解釈しています)
主にフィーチャーしているキャラが梅澤淳稔さんがメインプロデューサーに変わって以降の作品なので、志水さんと組んでいることも含めて梅澤Pキュアの集大成っぽい印象もあります。
フレッシュの映画における玩具達といい子役が声優を担当したフーちゃんのリセットといい、志水さんは容赦がないと思ったりもw


【脚本について】
教育的なところは成田良美さんらしく、個人的な印象では結構そのらしさが貫かれたストーリーになっていて正しく児童向けだなあと。
ちょうど「プリキュアシンドローム!」という本を読んでいるところなのもあって改めて思うのは、
前々から持っている印象として成田良美さんはプリキュアシリーズの精神性みたいなところに影響を与えている部分が結構大きいと思うのがあって、
それは先述の本でも言及されたSSでシリーズ構成になり満と薫を出してストーリーを転換したのが特に印象的なエピソードで、
要するに敵キャラクターにも感情移入していくようになった部分は成田さんの色が結構あるんじゃないかな、というところです。
その辺は5なんかは鷲尾天プロデューサーが結構力を入れて脚本に赤字を入れたポイントのようですが、
5GoGoでは味方と敵を往復するシロップを出したりという部分に成田さんの意志が現れているかなとも。
そんな成田さんなのでフュージョンという敵(の一部ではありますが)と友達になろうというストーリーにするのはなるほどらしいなと。
ちょうど「まどか☆マギカ」に対してのアンサーとしても良いんじゃないかと思ったりもします。
根が敵性であったりしてもお供の妖精は友達なんだ、と。


【キュアエコーについて】
オリジナルキャラのキュアエコーに関しては、なかなか人に声をかけられず友達ができないあゆみを一時期ウィスパーボイスで鳴らした
能登麻美子さんが演じるというのがなかなかに分かりやすくて思わずなるほどとか思ったり。
それは「キュアエコー」という名前にもかかってくる大事なところで、何故エコーって名前かというと「友達に届けるための声を増幅させる」ために生まれたプリキュアだからなんですよね。そうしたシステムとして昇華させてる辺りもまた良かった。


【旧シリーズキャラについて】
良く言われている部分ですが、5までのプリキュアがしゃべらない位の存在感なところについては、
あゆみ主体で彼女が主にみゆきを始めとするスマイル勢や響らと関係を深める中で出てくる友達の友達位のポジションなので、
逆にこれくらいの登場になっているぶん友達のつながりっぽさが出てて面白いな、とか思いました。
そうすぐ全員と話ができるわけじゃないし……しかし、友達の友達が別なPの作品なのがやたらメタだw
後、台詞のあるパートをいちいち入れちゃうとジェットコースター的なたたみ掛けるような展開にできないので、その取捨選択ですね。
あるいは今回目立っていたのは皆ASDXで後輩だったことがあるプリキュアだけとも取れるかな。
もうだいぶ長くなったのでこれ以上考えませんがw


まとまりのない記事ですが、色々と面白い要素が多くて楽しい作品だったということで。