話数単位で選ぶ、2025年TVアニメ10選

今年も書いていきます。ちぇすと〜!

 

本企画の集計は今年も「aninado」様が行っています。

企画趣旨も「aninado」様から引用させていただきます。

■「話数単位で選ぶ、2025年TVアニメ10選」ルール
・2025年1月1日~12月31日までに放送されたTVアニメ(再放送を除く)から選定。
・1作品につき上限1話。
・順位は付けない。
・集計対象は2025年中に公開されたものと致しますので、集計を希望される方は年内での公開をお願いします。

 

■『わたしが恋人になれるわけないじゃん、ムリムリ!(※ムリじゃなかった!?)』#11「いつまでもこのままでいるのは、ムリ?」

脚本/荒川稔久 Aパート絵コンテ/内沼菜摘 Aパート演出/松島弘明 Aパート総作画監督作画監督/坂崎忠、石井久雄、仁井学 Bパート絵コンテ・演出・総作画監督作画監督・原画/矢萩利幸

今年嬉しかったのは、注目していた演出家の内沼菜摘氏の初監督作があったことだ。

#01や#04でのハイテンションなテンポ感やパースの付け方、豊富なカメラアングルによる語り口はまさに内沼監督の持ち味が発揮されて良かったが、1話数となるとやはりこの話数を挙げざるを得ない。

瀬名紫陽花の内面に迫るこのエピソードではBパートの絵コンテ・演出から総作監作監のみならず原画に至るまで(しかも第二原画無し)を矢萩利幸氏が担当。半パートとはいえ、おそらく矢萩氏がここまでやったのは『君に届け』1期第8話以来ではないだろうか。

紫陽花が恋心に気づく花火の一連、れな子への告白が届かない駅のホームでの一連の切々としたムードはまさに矢萩氏の表情や芝居によって達成されている。

紫陽花が花火に手を伸ばしてからの一連のスローモーションのような停滞した時間の表現も素晴らしい。時間が均一ではなく伸縮しているのを感じられる映像にこそ鑑賞の喜びがある。

Aパートの内沼監督による3人でのデートや浴衣選びでのデフォルメも交えたコミカルさと、そんな中でもれな子のモノローグを止め絵で見せるシリアスの気配がBパートへの橋渡しをこなしているのも見逃せないポイントだ。

一昨年の10選での『彼女が公爵邸に行った理由』の選評でも書いたが、夏祭りと花火を描いた『夫婦以上、恋人未満。』#07に然り、内沼菜摘監督の花火回もまたスペシャルだった。

 

■『ハニーレモンソーダ』sparkle 11「想い、弾けて」

脚本/水上清資 絵コンテ・演出/大畑清隆 作画監督/下川寿士、二宮奈那子、大野勉、星野真澄、迫由里香、横江香、山口龍太郎、モリタユーシ、株式会社エクセレント 総作画監督/田中愛美、橋詰力、千葉充

2025年の事件のひとつと言えば、本作における大畑清隆氏の尖りに尖った演出の復活が挙げられるだろう。

極端なリピート、記号化された構図によるハイテンポ・ハイテンションな演出は90年代〜00年代前半に細田守氏らとしのぎを削ったあの頃の技術そのままで、今これを見られること自体がまず嬉しかった。

加えてそのスピーディな語りと執拗に繰り返される道路標示が羽花に我が生まれる心情と運動会のリレーの走りに結実するドラマのドライブ感には興奮してしまった。

単にトリッキーなだけでなく、観念的な道路標示による教室から渋谷への場面転換や、ガムテープで口を塞がれた界にボイスオーバーを重ねて拘束を解くのを省略する手際も抜かりがない。

背景の3DCGモブのあけすけな書き割り使いも最高だ。

 

■『太陽よりも眩しい星』第十一話「星座にならない星」

脚本/中西やすひろ  絵コンテ・演出/小林彩 作画監督/柳瀬譲二、光の園・アニメーション、長春知行、合一動漫有限公司、モードリーム 総作画監督/迫江沙羅

2025年の収穫といえば、小林彩監督の才気が溢れた本作が挙げられる。

撮影を駆使したエフェクトや、キャラをオーバーラップさせた画面分割より時間効率の良い二人の人物の表情の見せ方、前カットのキャラの輪郭を残した特徴的な場面転換など、豊富な演出の手数が凄まじいテンポを生む。

それでいて劇伴やモノローグで感情はしっかりと繋ぎ、本作らしいリリカルさを手に入れていることが驚きだった。

技法は最新だが、その根底にあるスピーディでありながら、むしろそれ故にエモーショナルな映像は出崎統監督を何度も連想させられた。

特に白眉だったのがこのエピソードの終盤。岩田朔英が本心を口にしてしまうまでの一連の場面だ。

神城光輝が受付に来るまで待ち焦がれる朔英の心情を、幼い頃の姿に重ねて描く表現からして素晴らしいし、足音を聞いて目を向ける朔英の目線に動画枚数を使うタイムシート使いが見事というほかない。

こうして期待を煽りに煽った上での光輝の言葉。それを聞いた朔英のブレスとオーバーラップした表情の真に迫った雰囲気、そしてつい告白の言葉を口にしてしまう朔英の決定的なカットの提示には、まさに出崎統的な映像の強度を感じた。

その言葉の後、光輝の表情を見る朔英の瞳のカット(これが1カットで表現できている!)には、本物の叙情が宿っている。

朔英を演じる藤寺美徳氏の演技も注目すべきポイントだ。

この見事な引きから続く最終回も、映像による語りの魅力に溢れていて素晴らしかった。

 

■『前橋ウィッチーズ』第5話「それ100%の70%?」

脚本/吉田恵里香 絵コンテ・演出/倉富康平 作画監督/小沢久美子、高崎美里、周美辰、冨澤佳也、乃木村行隆、江森真理子、堀澤聡志 総作画監督/平山円、堀井久美、三橋桜子、板垣徳宏

2025年作のオリジナルアニメの中でも野心的な姿勢が印象的だった一作。

吉田恵里香氏の社会問題を扱った視座や、アズが「無理!」と悪態をついて拒否している先が偏見と分かって、その無垢さが凛子を原点に立ち戻らせる価値転倒を描くスキルが明確に打ち出された第3話や、山元隼一監督の挿入歌や特殊EDといったTVアニメのフォーマットを利用したディレクションの効いた第10話も良かったが、個人的に刺さったのがこの話数。

マイの古い幼馴染と何でも無条件に分け合える幼年期が終わり、ユイナがもっと軽い繋がりの友情を提示するドラマも良いし、そこに推し活もメタファー的に重ねることでそのモチーフを説教臭くなく扱うことにも成功している。

推し活に打ち込む人に対して説教っぽいことを言うなんて(言ってしまえば娯楽に対する消費活動をしてるだけなんだから)容易いが、この挿話ではそうはしていない。

自分にとって大事な存在になっている推しのことは、たとえその人に悪し様にされてもなお無償の愛を向けてしまう。これはある種の修羅だ。翻って推される側は、そんな修羅を何千もの数、その背中に背負うことができるのか?

そういう問いを感じるし、優愛のように自分の利益も捨ててリセットしてやり直そうと思えるタレントってどれだけいるだろうか?とも思ってしまった。

というのもありつつ、ひたむきでしかあれないマイが歌う「You Are My World」とその結末は何度見ても涙してしまうのだ。

また、アズの「無理!」がコメディに使われたり、各キャラお決まりのフレーズや掛け合いがドライブしてきたのもこの辺りで、そういったコメディがキャラクターの愛着を育んでいるところも気に入っている。

 

■『小市民シリーズ』第二十一話「黄金だと思っていた時代の終わり」

脚本/内海照子 絵コンテ/武内宣之 演出・作画監督/高野やよい 総作画監督/具志堅眞由

瓜野高彦を主視点にときに自転車を乗り回し動き回っていた秋期から一転して轢かれた小鳩常悟朗の入院生活を淡々と描く冬期へ。

病院から出られず一日の大半をベッドで過ごす彼に、中学時代の推理の失敗の記憶が襲いかかる。傷が痛むように、彼の思春期の全能感が今いちど剥ぎ取られていく。

さらに言えば明かされた犯人からは、小鳩が本来受けられるはずの福祉すら受けられない事実が突きつけられる。それはもう小市民ですらないではないか。

その語りがあまりに冷ややかだが、それが本作らしくてどうにも惹かれる。

小佐内ゆきが来訪した場面での「たい焼きなんてどうでもいい」という台詞とともに動作なく屈んで小鳩に寄る省略や、犯人と対峙してからの後退りが場をサスペンスに一変させる、彼女が現れてからの静から動への転じ方も決まっていた。

 

■『雨と君と』第8話「鳴き声」

脚本/横手美智子  絵コンテ・演出/月見里智弘 作画監督/Hwang Bi Hong、Kang Min Young、Kim Dae Jung、Kim Ung Gi、高津智子、福崎りょう、佐藤綾子、矢立きょう 総作画監督/Kim Hyeon Ok、Sim Myeong Ju、大和田彩乃

語りに豊かさがあって気に入っている一作。

藤が編集者との打ち合わせのために夜まで家をあけて、その間留守番をする君を普段のような二足歩行やコミカルな描写をせず、引きの絵と冬の白んだ色合いで見せる描写も、帰ってきた藤が君の鳴き声を聞いた時の一瞬固まる間の取り方も良い。

白眉なのはその後の藤が君を抱きかかえるカット。すでに夜の屋内の場面のはずなのに昼間のように明るい光を二人が包む光源のちょっとした飛躍に目を奪われた。

このエピソードは三編から成り立っていて、上記は真ん中の一編だけど、ドイツから来た希依とシベリアから来た鴨を巡る前半と、藤の学生時代に触れて君がどこから来たのか問いかける後半、それが一人と一匹がともに歩く締め方に至る緩やかな繋がりも心地良い。

その前半パートの、君と希依の待つ夕陽に向かって藤が歩き出すことで一瞬光りが遮られる表現もまた、単なる癒やしアニメと見過ごさせないだけの滋味が宿っていた。

 

■『mono』#5「~生ハム山梨物語~/心霊スポット憑依事件」

脚本/吉岡南都  絵コンテ・演出/諸冨直也 作画監督/諸冨直也、夏木洋 総作画監督/宮原拓也

新興スタジオであるソワネの初元請け作品は作画で表現するパノラマなど映像的な野心に溢れているが、同時に軽快な移動を作劇に取り入れることで重くなりすぎていないのが良かった。

特にこのエピソードは生ハムの原木を買いに清里まで足を運ぶ一行の移動に着目した描き方が良かった。

春乃はハムを求めているけど、その場で食べるのではなく買うことが目的だからハム自体はことさら映さず、ロープウェイや展望デッキへの移動を描く選択が軽やかで心地良い。パノラマカメラの描写もロープウェイ移動の中で行われるから重さがない。

Bパートでは一転して春乃の部屋で話の大半を進めたり、一度行った夜叉神岬に戻ったりと定石破りをしつつレンズ感のあるレイアウトで楽しませてくれるのも良い。

Aパートで移動を描いた上で、最後に春乃と霊が立ちすくむ姿で締めるオチも効いてる。

 

■『日々は過ぎれど飯うまし』第7話「ずっと忘れないと思う」

脚本/比企能博  画コンテ/宮田政典 演出/山下知晃、春水融 作画監督/中島大智、若山政志、小笠原憂、林珠銀、小野和美、MARURIN、Romulo 総作画監督/満田一

省略や取捨選択が効いていた一作。

しのんの「その辺散策しよう」という提案にくれあが「私は休んでるね」と答えた次のカット、くれあの隣にはまこがいる。

まこがグループ内に昔馴染みのいないくれあを気にかけるエピソードだが、ここの説明を省略して何でまこも残ってるの?と視聴者の気を向けさせることで、そこから切り出すまこの話に自然と耳が向く。最も大事な部分への誘導が効いている。

そして昔馴染みのしのんでなく、大学で新たに出会ったくれあとの新たな友情を作ることで小学生の頃と同じ感覚を得ることができる、その時間の飛び越え方も良かった。

省略を効かせた分、ラストカットは花火が消えるまでじっくり尺をとって待つことができているのも良い。

 

■『戦隊レッド 異世界冒険者になる』第02話「戦隊レッドと冒険者達」

脚本/森地夏美  絵コンテ・演出/中野英明 作画監督/李少雷、原誠、溝渕美穂、金到暎、松本恵子、大野勉、田中克憲、米田雅哉、李雄宰、徐学文、Lit Edu、Paz Gómez de la Muñoza 総作画監督/丸山修二、伊藤亜矢子、大西秀明、長坂寛治

川口敬一郎監督作としては久しぶりにハマったと感じた一作。

異世界転生してきた戦隊のレッドを、特撮番組を取り巻くメディアのパロディを駆使して描くことでスラップスティックな強さを表現する原作と川口監督の作風が見事にマッチしている。

それに逐一ツッコミを入れるヒロインのイドラとの相性も良く、稲垣好氏の好演も映えているのがまた嬉しかった。

このエピソードではイドラといがみ合っていたいかにも異世界転生モノの序盤に出てきがちなチンピラ冒険者を戦隊モノらしいバズーカ砲の頭数に入れて、最後には全員で決めポーズまでする、2つのジャンルのフォーマットの崩し方に楽しませてもらった。

中野英明氏らしいハーモニーがイドラの心情やロゥジーの強者ぶりを印象付けているのも見どころだ。

 

■『悪役令嬢転生おじさん』第4話「おじさん、ビーストを召喚する」

脚本/岸倉弘幸  絵コンテ/竹内哲也 演出/小野田雄亮 作画監督/清水雄介 総作画監督/西岡夕樹、松苗はる香

天才アニメーター・竹内哲也氏の監督作だけあり、レイアウトの良さや要所の芝居・アクション作画が決まっているけど、何よりの美点はことさら動かしすぎずあくまで語りに奉仕するために描写があること。

さながら令嬢の持つ余裕と品格が如く、軽やかにコメディを楽しませるところが良かった。

このエピソードはAパートの従魔召喚の場、Bパートの屯田林家の居間で話の大半を進めるが、それを感じさせないアングルとコメディの手数で楽しませる手際が見事だった。

ゲームであればリセットマラソンするような状況でも、リセットの効かない作中世界にいることで従魔召喚の折に娘を思い出す憲三郎のドラマと、それを呼び水に娘視点に切り替わる語り口も良かった。

ここで初めて日菜子という娘の名前が語られる構成も的確だ。

ユーモアの奥に介護や子育てといった現実の人との関わりというモチーフが滲む本作らしさが重苦しくなく描き出されえいるのが良い。

そして娘を思い出した時のグレイスの瞳の細やかな動きに竹内監督のアニメーターらしい表現力が費やされるのが嬉しかった。

これまでの会話ログを見た日菜子と美津子の「お父さんだぁ!」のリアクションも最高。

 

今年は『わたなれ』『前橋ウィッチーズ』と、2022年お気に入りの一作だった『夫婦以上、恋人未満。』の山元隼一監督、内沼菜摘監督の新たな代表作を立て続けに観ることができたのが嬉しかった。

他にも仕事ぶりが印象に残った若手の方が多くいて、ベテラン・ビッグネームの監督らのドラマ作りが緩慢になっていくのを何度か感じつつも希望が持てて良かったな。

 

今年も年内に書き終えた……。

チャレンジ成功です!