CGエフェクト出身ということに注目して見る、京極尚彦監督の『ラブライブ!』PVや2期OP演出

ラブライブ!』2期のOPアニメは、色々な見どころがあると感じています。
まず、東映アニメーションが担当する3DCGは、セルルックもさることながらアニメ作画的なタイミングの付け方に違和感が全然ない。
それに、多分作画部分とタイミング付けをしっかり合わせているタイムシート使いの徹底も感じます。


そういったコントロールは、京極尚彦監督が3DCGを扱う部署の出身というところが出ているのかなと思います。
もう一つ、この京極監督の出身から見える特色があります。
それは、京極監督がCGエフェクト出身という部分です。
これは、以前書いた京極監督のカメラワークの記事とも関わってくる、監督のフィルムの流れへの意識を感じさせるものでもあります。
では、「それは僕たちの奇跡」までに連なる京極監督のCGエフェクト演出を、「snow halation」、「夏色えがおで1,2,Jump!」といったアニメPVから見て行きましょう。


・「snow halation

このPVは曲の通り雪のCGエフェクトがふんだんに使われています。
そんな中、エフェクトに注目するとまず目を引くのが最初のサビ。
「届けて切なさには」*1の部分で引きの俯瞰からカメラをクレーンのように素早くキャラ正面まで移動させることで、
雪よりもカメラの動きが勝ち、雪が静止したような印象になっています。
その後の「悔しいけど」のカット*2も同様で、雪があることでそれに逆らうカメラの動きが強調されて、
動きにダイナミックさが出るんですね。

今度は最後のサビの部分を見てみましょう。
穂乃果がソロを取る「届けて切なさには」*3でのカメラのダイナミックな奥への移動によって、
雪の速度も他のカットより早くなっています。
「思いが重なるまで」のカット*4は1番サビ同様、カメラの速度が勝って雪が静止したようになっていますね。
そして「賛成」のカット*5では、カメラが一気に奥から手前に移動して、
雪もそれに合わせてこちらに迫ってくるような形になっています。


こうしたCGエフェクトは、3DCGによる空間を意識させる他にも、このように映像の中の動きに緩急をつける効果があります。
以下もまたその例です。


・「夏色えがおで1,2,Jump!


こちらのPVでは最後のサビの部分に注目してみましょう。
「真夏のせいだよ」のカット*6では、上述のカット群と同様、CGエフェクトの花びらの動きに逆らうようにカメラが動き、
画面にスピーディさが生まれます。
このカットではさらに、カメラの動きが止まったカット終わりに、花びらをゆっくりめに舞わせることで、
カット終わりのジャンプが印象に残るようにしています。
「うなずいて」のカット*7も花びらと逆にカメラを動かして、花びらを他のカットより遅く見せることで、
楽曲にあわせた緩急を生み出していますね。

ここもポイント。最後の「Summer」*8では画面奥にのみ花びらが舞い、その速度は非常にゆっくりです。
そして、「Day」*9にあわせて一気に手前を花びらが舞い、楽曲やダンスとシンクロして画面に動きをつけます。
ラストカット*10でも花びらはダンスとシンクロするように始めゆっくり、一気に舞う、という動きを見せていますね。


・「それは僕たちの奇跡


ここまで見てきたCGエフェクト演出は、今回のOPアニメでも巧みに使われています。
サビ2回目の「さあ夢を」*11では素早くカメラを→向きに移動することで紙吹雪が静止したように映り、
ここでのカメラのクレーン移動を印象づけます。
そしてポイントなのがここ。「負けない」*12で腕を振り上げた1,2年生を↑向きにPANに映しますが、
次の「心で」*13のカットでは3年生を(斜めアングルですがキャラからむかって)↓向きのPANで映します。
↑向きのPANは紙吹雪の落ちる動きに逆らっていますが、↓向きはその動きと同調しています。
つまり、流れに逆らっていない、流れを避けられない、ということの示唆のように映ります。
流れというのは、画面上は紙吹雪の落ちる動きですが、表現としては時間の流れと言っても良いと思います。
3年生にとっては、作中でも言われる卒業というタイムリミットがまず真っ先に思い浮かぶところ。

次の「明日へ」のカット*14は、より斜めの角度からカメラ移動が入り、紙吹雪の中を駆け抜けていきます。
OPアニメ中もっともカメラの動きが激しいこのカットは、カメラと紙吹雪だけでなく、そこに振り返る穂乃果の動きも加わります。
紙吹雪と同様に下に向かうカメラの動きに対して、穂乃果は逆らい、上を向きます。
これは一つ前の示唆的なカットからの一連の流れで、穂乃果たちの時間の流れに対する表明を表現したアクションだ、
と思わせるような、そんな力強さを感じます。
そして「駆けてゆこう」のカット*15。2回目に伸ばした穂乃果の手が、手前を落ちる紙吹雪に届くかどうか、
というところでカットが切り替わります。
このカットからは、何かを掴もうとする穂乃果の意思と、掴めそうだという期待を煽る意図を感じます。
ここもカットの連続性から、時間の流れに対して何かを成そうとする意思と、それが出来るかも知れない期待といった印象を受けました。


以上のように、個人的な印象もありますが、これまで『ラブライブ!』のPVで使われていたCGエフェクトを用いた
フィルムの流れや印象付けの手法が、2期OPでは映像自体のストーリー性も加わる形で活かされていると感じました。
CGエフェクトやカメラの動きの速度の違いによって、カットごとの印象をさり気なく変えている技法は非常に巧みだなとも感じます。
あくまでさり気ない部分で、メインであるキャラクターや歌の印象をより深くするというのは、まさに「演出」とも思わされます。
またフィルムの流れの印象を重視し、それによって何かを表現しようとする手法は、個人的にとても好みでもあり、良いなと思う部分です。


余談ですが、2期の本編は、1期とは状況が変わったこともあり、大きな壁が現れるドラマとはまた違うストーリーテリングとなっていて、
1期の目線の置き方やドラマの見せ方が好きな身には、物足りなさも感じてしまっていたりします。
このOPアニメから受け取れる、時間の流れへ立ち向かう様やそれによるドラマが、後半観られればと思っています。


ラブライブ!関連エントリ

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