ウテナファン的な『キャプテン・アース』先行上映第1・2話感想

一週間経ってしまって、関西ではもう本日放送なのですが、第2話までの上映だったし、
放送前ならいけるだろう……という感じでつらつら書いていこうと思います。


キャプテン・アース』は、榎戸洋司さんが公式ガイドブック*1のインタビューで、
「これまで作ってきた作品の、集大成になっているかなと思いますね。」
と書いているように、これまでの榎戸洋司さんの作品――たとえば『少女革命ウテナ』――の要素を随所に感じられるものになっていました。
なので、今回の感想はそういった部分を中心に拾っていく感じにしていきます。
感想については、ストーリーの進行順に書いてないので、ご了承を。


<第1話「アースエンジン火蓋を切る」>


・ロケットで発射され、宇宙で合体するアースエンジン
ここはもう、「『少女革命ウテナ』の決闘場へ向かうパートのロボットバージョン」といった感じでしたw
アースエンジンが昇っていく過程でどんどん合体して大きくなっていくというのは、ウテナの衣装チェンジに近い意図を感じます。
入野自由さんの発言からすると、いわゆるバンク的な使用がされそうなあたりもまさに、ですね。


・幼年期のダイチとテッペイ
幼年期に少年が人間ではない(?)少年と出会い絆を深める、というのは『劇場版セーラームーンR』っぽいなと感じました。
この映画は榎戸さん脚本ではありませんが、榎戸さんと五十嵐卓哉さんの盟友である幾原邦彦さんが監督で、五十嵐さんも助監督をされています。
この場面での、「互いに驚かせあってペンダントをわかちあう」というのは、いかにも榎戸さんらしい作劇で良かったですね。
ウテナ』の脚本集に書いていた、「対立する以前の人間関係」という榎戸さんの言葉を思い出します。

対立しない人間関係の喪失は、幼い頃、誰もが一度は体験する通過儀礼であるから、幼い幹の病気を、象徴的に“はしか”にしてみました。
「本当に大切なものは自分の手に入れて守らなきゃ」と冬芽は言う。対立なくして“自分”は存在しない。


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・幼年期のハナとの出会い
大きな水泡に閉じ込められたようなハナとの出会いは、『ウテナ』第34話でのウテナが幼年期に初めてアンシーと出会う場面のようでした。
どちらも囚われの褐色の少女と、主人公の原初体験という点で似ているかなと思います。
今作の場合、少女がその場で開放されて話が動き出すので、また『ウテナ』とは違った展開ですが。


・反射光で目の隠れたメガネ姿のアカリ
これは五十嵐さんが監督を務めていた『おジャ魔女どれみ』シリーズ等にあったような表現だなーと感じました。
反射光が透過光で表されるのではなく、見ている先の画面が反射しているあたりに表現技術の進歩を感じますw
アカリはハッカーとして「魔法少女日高里菜さん曰くウィザードのことを指すそう)」を名乗っており、
パーソナルカラーは黄色、そしてこの反射光メガネというあたり、藤原はづき的なのかも?
セーラームーンでの『亜美ちゃんの初恋』や、はづきちゃん等、メガネっ娘をコミカルにしてしまうあたりは五十嵐さんらしいとも思えます。


・エピソードの所感:通過儀礼的な映像の推移
エピソード単体の感想としては、主人公のダイチに寄り添って、彼が一歩踏み込むまでをまとめたフィルムという印象です。
その過程で、過去彼にとって決定的だった体験がよみがえるというストーリーの部分に、
非日常的な島に赴き、暗い地下に降りていったところで自分を変える何かに出会うという画面上の推移が絡んでいるのが、
フィルムとして通過儀礼(イニシエーション)を思わせ暗示的でもあり、ひとつの流れを感じられるものでもあるのが良かったですね。
そして、そこから一気に宇宙に飛び出すから、とても気持ちのいい視聴体験感がありました。


<第2話「銃の名はライブラスター」>


・キルトガングの戦い方と初戦闘
キルトガングのモコの、胸を揺らした戦い方は、セクシーというよりアホっぽさもあるあたりがセーラームーンの敵っぽくもありました。
そんなモコが相手で、かつアカリのリードに身を委ねる、というシチュエーションのエロスぶりは、流石榎戸さんだなーと思ったところですw


・久部マサキの部屋
キルトガングの背後にいる久部マサキの、AIが作り出す幻想的な部屋は、『ウテナ』における鳳暁生のプラネタリウムのある部屋のようでした。
AIのしゃべり方はちょっと劇場版の鳳暁生っぽいかなとも。
なんにせよ、AIの方が下世話で人間味があるあたり、マサキのパーソナリティが見える感じですね。
果たして彼は世界の果てクラスの人物なのでしょうか。
少なくとも、キルトガングという戦いを宿命付けられた若者たちを、彼らの名前の通り「歯車」のように扱うことを狙っているようですが。


・籠から出るハナ
ここは『ウテナ』最終回におけるアンシーのようでした。
そう書くと第2話にしてもう、という感じですが、こちらは男主人公でヒロイックでもあるので、何を描くのかの違いかなと思います。
ハナを拘束していたレイトは生真面目さを押し出したキャラで、『ウテナ』において旧態依然とした男性の象徴とされていた西園寺夾一的でした*2
そういった男が第2話で敗れるのもまた、『ウテナ』、ひいては五十嵐さん・榎戸さんらしいのかも知れません。


・三人でブーメラン
三人組というのは『STAR DRIVER 輝きのタクト』でも重要なモチーフでしたね。
ここで連想したのは、『ウテナ』第37話でのウテナ・幹・樹璃のバドミントンでした。
向こうは3クール続いた中で生まれた関係性が描かれたシーンですが、こちらは出会いの頃を思い出すような関係性を描いています。
榎戸さんは『ウテナ』のバドミントンの場面をとても気に入っているようで、脚本集で以下のように書かれています。

演出がいい。
愛されることより愛することの豊かさに気づいたウテナ、幹、樹璃、七実たちの、共感のアトモスフィアが見事に映像化されている、と感心した。いや、脚本家冥利につきます。


http://kasira.blog97.fc2.com/blog-entry-118.html


「共感のアトモスフィア」、というのは微妙なニュアンスの言葉ですが、
個人的にはこのダイチたちのブーメランをする場面にもそういったものを感じるのでした。


・エピソードの所感:ダイチの行動に関して
ダイチがライブラスターを呼び出して銃を撃つ、というのは編集も飛躍を狙ったものでもありますが、
「普通の男子高校生」としたキャラがとる行動としてはなかなかヒロイックで驚いた面もありました。
野球部レギュラーの爽やかな五十嵐さんからみたら「普通の男子高校生」なのかな、とも思いましたがw
あるいはあの島でテッペイたちと再会したことで自らの「やりたいこと」を見つけたがゆえの行動かな、というのが自分の解釈です。


話はずれますが、最近ラブライバーでもあるため、「ライブラスターってラブライブラスターとか言われそうだなー」とか思ったりもしましたがw
実際のところ、『ラブライブ!』の高坂穂乃果もあの場面ではライブラスターの引き金を引くようなキャラでもあるよなとは思います。
『スタドラ』の時点でタクト・スガタ・ワコは穂乃果・海未・ことりと妙にシンクロするところがあり、この辺は面白いと感じたりしていて。
『スタドラ』は最終回で男であるスガタの孤高に、『ラブライブ!』では最終回で女であることりの業に迫るという違いもまた興味深く。
今作も、ダイチ・テッペイ・ハナは穂乃果・海未・ことり的で、特にハナは結構ことりの近いタイプのような印象があります。
ハナの「だって、ブーメラン見たいんだもん」は、
ことりの「でも、絵里先輩のダンスは、ちょっと見てみたいかも」*3的なサムシングを感じたりしました。
榎戸さんはアンシーを思わせる引き出しを用いていますし、ワコ以上に女子にも迫るとなるとさらに楽しみになるなと思うところです。

*1:AnimeJapan2014や先行上映イベント等で配布されていたもの

*2:キャストも西園寺と同じ草尾毅さんなんですよね

*3:#8「やりたいことは」中の台詞