『ガッチャマン クラウズ』への期待〜一ノ瀬はじめと南野奏

ガッチャマン クラウズ』楽しく視聴しています。
今作はまず、ガッチャマンシリーズの新作でありつつ、個性派・中村健治監督による自由なイメージの刷新にやはり驚かされます。
一方で、個人的に『つり球』に続いて中村監督と組む、シリーズ構成の大野敏哉さんにも注目していたりします。
今回はそのお話。


・前作『つり球』と前前作『スイートプリキュア♪
まず私はプリキュアシリーズのファンなので、大野さんといえば『スイートプリキュア♪』のシリーズ構成でアニメ畑に入ってきた方。
そんな『スイプリ』を終えて参加された『つり球』も、その二つの仕事を踏まえると面白い図式がたつなと感じました。
『スイプリ』は、主人公・北条響が妖精ハミィと出会いプリキュアになる一方で、友人らに支えられながら音楽を再び愛せるように変わっていくお話でした。
そして『つり球』は、主人公・真田ユキが宇宙人ハルと出会い釣りを始め、友人ができてコミュニケーションが改善されていくお話でした。
どちらもひとつ、主人公の心の癒しを描いたリハビリのようなお話が縦軸としてあるんですね。
もうちょっと突っ込んで各キャラクターを見ても、実は結構共通点が多いと思っています。
試しに、左が『スイプリ』、右が『つり球』のキャラ。


北条響←主人公。徐々に心が癒されて変わっていく→真田ユキ
ハミィ←別の世界から来て主人公と出会う。ひたすらに純粋無垢→ハル
黒川エレン←それぞれハミィ・ハルを目の敵にするライバルだが、仲間に。天然な一面も→アキラ・アガルカール・山田
調辺アコ←クールなメガネ。家庭に問題を抱える。経験面で主人公の先輩格→宇佐美夏樹


最もわかりやすい部分で、それぞれ主人公を導く老人として調辺音吉、真田ケイトというキャラが配置されているのもあります。
と調子よく書いてきましたが、『スイプリ』をご存知の方なら少しおかしいと思うはず。
ここには北条響の親友、南野奏がいません。
多分、『つり球』でいえばココ*1辺りに当てはまるのだと思いますが、今ひとつこの奏の要素はこの作品では引っ込んでいた印象です。
ではそんな南野奏とはどんな人物なのかというと、



第7話において人探しの最中、諦めようとする響に怒り「脚くじいた」といっておんぶさせ(画像左)、
少し休憩したらけろっとして、脚について尋ねられると「さっきは痛かったの(ハートマークのつく発音)」の一言で一蹴。
イケメンに目がなく、先輩の王子正宗を見ると「王子先輩王子先輩王子先輩王子先輩王子先輩王子先輩(ry」といった有様(画像右*2)。
という感じで、とても女子らしいキャラクターです。『つり球』はやっぱり男子メインですから、引っ込むのも必然でしょうか。
『スイプリ』の境宗久監督も、対談インタビューのなかで奏について

 奏はわりと唯我独尊ですからね(笑)。


アニメージュ2012年2月号 スイートプリキュア♪ 幸福のメロディを奏でる日まで

と仰るほど。
本筋から少しずれたところで発揮されるそんな彼女の個性は、個人的に大野さんのカラーでもあるのではないかと思っていました。


・そして『ガッチャマン クラウズ
前置きが長くなりすぎましたが、そこで今回の『ガッチャマン クラウズ』。
主人公は一ノ瀬はじめという女の子。しかも公式サイトのキャラクター紹介には

「美しいか、美しくないか」「かわいいか、かわいくないか」を判断基準とし、マイワールド全開で突っ走って行ってしまう


http://www.ntv.co.jp/GATCHAMAN_Crowds/character/index.html

とあり、期待させてくれます。そして実際に見てみると、予感は確信に変わりました。



左は手帳フェチぶりを発揮するはじめ*3、右は肉球フェチぶりを発揮する奏*4
全くもって唯我独尊してます。
奏は穏やかなようで頑固で、結構よく怒ったりするキャラでしたが、はじめはもっとハミィに寄った飄々さを感じさせます。
とはいえかたやスイーツ作り、かたや文具のコラージュや装飾の好きな、根本の創造的な部分も近いものがあります。
また、はじめが他者への想像力を働かせ、敵とされていたMESSとコミュニケーションをとる様は、
『スイプリ』終盤のラスボス・ノイズとの和解に通じるものさえ感じさせます。
巻き込まれた先の世界観に対して、彼女の考えや生活といった面がぶつかる作劇もまたプリキュア的なところでしょうか。
そんなプリキュアの終盤めいた想像力を最初から持っているという辺り、そこから更に一歩進んだものを見せてくれるかも注目どころ。


はじめが拠り所にしているギャラックスが総裁Xに当たるキャラの作ったもの、という部分も『スイプリ』において、
対立するプリキュア側のメイジャーランドと敵のマイナーランド・ノイズは、全て音楽として価値に優劣がなかったことを連想させます。
というか、その総裁X開発者の爾乃美家累も悪事を目的に動いているわけではないようですね。
どうも、「メシウマ」と叫ぶのがプリキュアの敵っぽい今作のカッツェ様が怪しいという感じで。
クールなメガネで変装するキャラといえば、上述した調辺アコ*5もノイズに付け入られかけてたので、それを進展したことになるかも?


また、ちょっとずれたところでは、SNSで繋がる立川市民の方々は『スイプリ』の加音町、『つり球』の江ノ島っぽい牧歌的さがあって、そこも大野さんの味を感じます。
『クラウズ』第3話での校内放送は、『スイプリ』第41話の加音町全体への放送でお祭り騒ぎを起こして敵を撹乱する展開と近い運び方な感も。
『スイプリ』では震災の影響でシリーズ構成を変更ということがあり、今作『クラウズ』はSNSを扱うという辺り、妙に現代的なテーマに縁のある方だな、とも思わされたり。


もちろん、ここに挙げた共通点らしきものは大野さんの引き出しがそれだけしかないということではなく、
あくまで個人的に注目している大野さんの良さの部分です。
『クラウズ』は主人公の直接の先輩・橘清音以外のキャラはまだまだ謎が多く、この後更に何が来るかわかりません。
現代的なモチーフを取り上げている中村監督と組んで、『スイプリ』的な唯我独尊の女子がどうなるのか、楽しみにしています。
中村監督もキャリア初期の『デジモンアドベンチャー02 ディアボロモンの逆襲』助監督から*6、「ぼくらのウォーゲーム」的な終盤の展開を見せた『つり球』を経てのSNSを扱った今作なので、その意味でも注目だったり。


おまけ



ピンク髪の敵幹部たち。

*1:上述したハルの妹

*2:第41話

*3:第1話

*4:第2話

*5:アコの変身するキュアミューズは、はじめ正体を隠すため仮面のプリキュアだった

*6:製作中止となった細田守版『ハウルの動く城』助監督の予定もありました